英語の勉強をしていて、特に難しいと感じるのは「仮定法」ではないでしょうか?
英語を勉強し直そうとしている方の中にも、「学生時代に習ったけど、全然覚えてないなぁ……」「仮定法が分からなくて英語が苦手になっちゃったんだよね」と思っている人も多いはず。
そこで今回は、大学院の修士課程まで英語を専攻した元英語教師でもある私が、「英語の仮定法って何?」という悩みに対して、仮定法を0から解説します。
この記事を読めば、「仮定法」についての苦手意識がなくなり、英語の勉強を挫折せずに続けることができるでしょう。
目次
結局、英語の「仮定法」って何だろう?
「結局のところ、英語の『仮定法』って何だろう?」と疑問に思いますよね。
「仮定法」とは、一言でいってしまうと「事実ではない仮定の話」を表す方法です。
【仮定法とは?】
「事実ではない仮定の話」を表す方法
これだけ聞いてもよく分からないと思うので、さらに詳しく解説していきます。
話す人の「気持ち」が動詞の形に表れる
日本語では、「お金がもっとあったら良いのになぁ」といったように、「のになぁ」などの言葉をくっ付けて気持ちを表しますよね?
でも、英語にはそのような表現方法がありません。気持ちを表すためには、「may」や「must」といった助動詞を付けるか、「動詞の形」を変えることが必要なんです。
「動詞の形」とは、具体的には動詞を「過去形」にすることを指します。
- study→studied
- write→wrote
- read→read
「元々の動詞の形とは違う」これが本来の動詞の意味にちょっとした違いを付け加えるんですね。まずは、ここを押さえて頂きたいと思います。
「時間の距離=気持ちの距離」を意味する
過去形とは、「過去を表す動詞の形」だというのは、中学校で誰もが習ったと思います。
でも、実は過去形は、本質的には過去を表しているわけではありません。本来的には、「過去形」は「距離が離れている」ということを表しています。
【過去形の意味】
距離が離れている→「過去」を表す
あなたは、「canがcouldになると丁寧な表現になる」「willがwouldになると控えめな表現になる」とどこかで聞いた覚えはないでしょうか?
勘の良い方なら気付いたかもしれませんね。相手が目上の人や初対面の人だと、心理的な距離が生まれます。その心理的な距離を、「過去形」という形で表現しているんです。
仮定法についても、丁寧表現と全く同じことがいえます。仮定法は「過去形」を使う表現です。現実との心理的な距離を「過去形」という形で表し、「仮定」の意味を持たせているんですね。
「仮定法=妄想法」です
「『仮定法』って何だっけ?」と分からなくなってしまう方は、「仮定法=妄想法」と覚えておいてください。
仮定法の典型的な例文は、以下のとおりです。
【例文】
If I had enough money, I could buy a new car.
(もし十分なお金があったら、新しい車を買えるのになぁ。)
「もしお金があったら、車を買いたいなぁ……」と妄想しているんです。でも、残念なことに現実にはお金がないので買えません、ということも意味しています。
「仮定法」で表すことは全て、現実とはかけ離れた「妄想の中の出来事」なんです。
「仮定法」という言葉は覚える必要がないですし、むしろ「仮定法」という名前のせいで難しく感じている人が多いと思います。「仮定法=妄想法」これで覚えてしまいましょう。
「仮定法過去」ってどんな意味だった?
ではまず、仮定法の一番スタンダードな使い方である「仮定法過去」について解説していきます。「仮定法過去」どんな意味だったか覚えていますか?
忘れてしまっている人も、自信のある人も、今一度「仮定法過去」の意味を確認しておきましょう。
「仮定法過去」の意味・使い方
「仮定法過去」は、「現在の仮定」を表現するために使います。過去を表すために使うのではありません。過去形という形を使って、「現在の仮定」を表すんです。
【仮定法過去の意味・使い方】
「現在の仮定」……~なら良いのになぁ など
なぜ「現在の仮定」なのに過去形を使うのかというと、過去形によって「現在からの距離」を表しているからです。
過去形の形を使うから「仮定法過去」なんだということを、頭に入れておきましょう。
「仮定法過去」の基本形
仮定法過去の基本計は、以下のとおりです。
【仮定法過去の基本形】
If+主語+動詞の過去形~,主語+would+動詞の原形~.
【例文】
If I were you, I would not marry such a man.
(私があなたなら、そんな男と結婚しないのになぁ。)
気を付けてほしいのは、仮定法といういうのは「I were you」の部分を指しているということです。つまり、ifがあるから仮定法だとか、wouldがあるから仮定法ということではありません。
あくまで、「動詞の形を変えることによって仮定の意味を出す」というのが仮定法です。上の例文でいうと、「私」は「あなた」ではあり得ないので、仮定の話になっています。
「現在の仮定」を表すために、「現在形→過去形に形を変えて距離を取る」というのを押さえましょう。
「仮定法過去完了」もマスターしておこう
「仮定法過去完了」と聞くと、英語嫌いの方は拒否反応が出てしまうでしょう。
ただ、「仮定法過去完了」も考え方はいたってシンプルです。ポイントは、「過去からの距離」です。
「仮定法過去完了」の意味・使い方
「仮定法過去完了」は、「過去の仮定」を表現するために使います。「~だったら」というような意味です。
【仮定法過去完了の意味・使い方】
「過去の仮定」……~だったら良かったのになぁ など
過去完了は「大過去」ともいわれるように、過去よりももっと前の時点を表します。つまり、「過去から距離が離れている」ということです。そのため、過去完了形を使って過去からの気持ちの距離を表し、「過去の仮定(過去の妄想)」を表現することができます。
こちらも、過去完了形の形を使うから「仮定法過去完了」なんだということを、頭に入れておいてください。
「仮定法過去完了」の基本形
仮定法過去完了の基本形は、以下のとおりです。
【仮定法過去の基本形】
If+主語+had+過去分詞~,主語+would+have+過去分詞~.
【例文】
If I had known your address, I would have written to you.
(もしあなたの住所を知っていたら、あなたに手紙を書いたのになぁ。)
まずは、I had knownだけに注目してください。この部分が過去完了形になっていて、過去からの距離を表すので「過去の仮定」になっています。これが、「仮定法過去完了」です。
一方、主節を見てみるとI would have writtenと通常の「過去を表す助動詞」の使い方になっていますよね。例えば、過去の推量を表すときに以下のような表現をします。
【例文】
Anyone else would have done the same.
(他の誰もが同じことをしただろう。)
つまり、主節では単純に過去に起こり得たであろうことを、助動詞+have+過去分詞で表しているだけです。仮定法過去完了とは、別個に考えてください。
現在・未来の仮定を表す「仮定法現在」もある
現在・未来の仮定を表す「仮定法現在」の用法もあります。
「仮定法現在」という用語で説明されることは少ないですが、様々な場面で見つける表現ですので、「仮定法現在」についても押さえておきましょう。
「仮定法現在」の意味・使い方
「仮定法現在」は、「現在・未来の仮定」を表すために使います。
【仮定法現在の意味・使い方】
「現在・未来の仮定」……かしら(日本語訳には表れないこともある)
上記のように日本語には訳出されない場合も多いので、仮定法現在を理解する際には注意が必要です。
「仮定法現在」の基本形
「仮定法現在」の基本形は、以下のとおりです。
【仮定法現在の基本形】
動詞の原形(現在形が使われることも多い)
【例文】
They proposed that the laboratory be built.
(彼らは実験室を建ててほしいと提案した。)
God bless you!
(幸運を祈る![お大事に])
上記のようにthat節内に現れる動詞の原形は、仮定法現在の用法です。例えば、上の例では実験室を建てることは願望であって、(現時点では)現実にはなっていません。
また、God bless you!(幸運を祈る!)は、英語圏でくしゃみをした際にかける慣用表現です。現在のことを表すなら普通は、三人称単数のblessesのはずですが、原形を用いて仮定の意味を表しています。
実は「仮定法未来」で未来の仮定も表せる
「仮定法未来」で未来の仮定を表すこともできます。
あまり馴染みのない使い方かもしれませんが、文章を読むときやリスニングの問題で出くわすかもしれないので押さえておきましょう。
「仮定法未来」の意味・使い方
「仮定法未来」は、「現在・未来の仮定」を表現するために使います。仮定法現在よりも起こり得る確率が低いことを意味します。
【仮定法未来の意味・使い方】
「現在・未来の強い仮定」……万一、ひょっとしたら など
かなり仮想の意味合いが強く、ほとんど起こりえないという含みがあることを押さえておきましょう。
「仮定法未来」の基本形
仮定法未来の基本形は、以下のとおりです。
【仮定法未来の基本形】
If+主語+should(would)+動詞の原形~, ~.
【例文】
If you should meet him, tell him to write to me.
(万が一あなたが彼に会ったら、私に手紙を書くように言っておいて)
shouldはshallの、wouldはwillの過去形です。shallもwillも未来を表す表現なので、それらを過去形にすることで未来における「気持ちの距離」を表しています。
「仮定法未来」については説明することがたくさんあるのですが、出現頻度も少ない上に、あたまがこんがらがってしまうと思うので、ここでは割愛します。
まずは、上で説明した「仮定法過去」「仮定法過去完了」「仮定法現在」を確実に押さえることが大切です。
まとめ:「仮定法=妄想」と覚えておけば、もう怖くない!
今回は、「英語の仮定法って何?」という悩みに対して、仮定法を0から解説しました。
本記事の要点は、以下のとおりです。
- 「仮定法」は、事実とは異なる仮定の話を表す「妄想法」
- 「仮定法過去」は、過去形という形を使うことで現実との距離を表している
- 「仮定法過去完了」でも、過去完了形という形で過去の事実との距離を表している
この記事を参考にして、「仮定法」についての理解を深め、英語の勉強を挫折せずに続けてくださいね。